「四月はバス停も電車の駅も人でいっぱいだな」
「そうね、新入生や新入社員が増えるからね」
「でも、毎年四月だけは人がいっぱいだけど…」
「そうね、毎年ゴールデンウイーク明けには元の数に戻るって、いったい…」
「みんな何処から来て何処に消えてゆくんだろう…」
「毎年毎年凄い人数が消えていく計算になるわけなんだけど… どうなっているの?」
「地方のキャンパスに振り分けられるとか、海外とかに出張とか、あまり聞かないよな」
「ひきこもるにしても膨大な人数よね、ありえないわ」
「最近よく聞くAO入学っていうのが怪しいと思うんだけど」
「え?」
「最初は一流大学が始めたポリシーのあるものだったようだけど、今はどこの大学も専門学校も集金目当てでやり始めて、成績が悪くても授業料と寄付金を払えば入学できて、入学後もそれなりのパフォーマンスだけで卒業まで簡単にさせている」
「AO入学AO卒業、AO入社AO退社って、基本一か月でキャリアを買えるって事かしら? それで四月だけが街中人でいっぱいになるって事なのかしら? でも、一か月でAO卒業、AO退社した人たちが消えるという答えにはなってないわよ」
「AO進級した学生は11ヶ月間シベリアで冬眠し、AO卒業、AO退社した人たちは一気に老けるという仕組みだったとは…」
「六月にはもう老衰するような遺伝子組み換えがなされていたのね、墓地もなく肥料になる事も決定していたなんて…」
「一気に老けるし、子供の時の成長も早い… 幼稚園も小学校も中学校も高校もAOな人は、実質数か月の活動人生という事か…」
「学校、会社を存続させ、低コストで人口一億人を維持し続けるって大変な事なのね」