ss1607 吾輩
「サヴァンヘッドギアの普及ではっきりしたけど、人間には自我なんてものは無かったのね」
「もう、生まれる前が怖い、自分が居ない時代が存在したのが怖いとか、死んで意識が宇宙から無くなるのが怖いとか、そんなの間近にサヴァンヘッドギアでコロコロこころが変わってゆく人たちを見ていると、もう、どうでもいいって感じよね」
「ほんとそうよ、記憶が唯一自分というものを定義するんじゃないかと思ったけど、性格が変わっちゃうとぜんぜん蓄積した記憶の価値観なんて変わっちゃうじゃない。親兄弟への想いもまるっきり違うものになっちゃって…信じられないわ」
「あっ、人工知能の吾輩≠ェ来たわよ」
「独裁者ねワイファイ≠ヒ、サヴァンヘッドギアのワイファイ機能の争奪戦に勝ち抜いた最強の人工知能だわ、サヴァンヘッドギアを付けた人間は、これからは彼に支配されるようになるのね」

「さすがは最強の人工知能吾輩≠セわ、太陽風を利用した強力な波≠ナ地球だけじゃなく火星に移住した人類まで操作しているわ」
「そうさね、すごいわね、一度サヴァンヘッドギアを被ったら最後、宇宙中で彼の手足になっちゃうんだわ」
「でも上手く管理してるじゃない、サヴァンヘッドギアを被った人たちみんな生き生きと吾輩≠ゥらもらった家事や天職な仕事をして生きているわ。最良に趣味や性格を管理され、満足し、戦争も無くなったわ」
「あら、いつの間にかあたしたちだけよ、サヴァンヘッドギアを被ってないのは」
「別に抗う必要ないじゃない、あたしたちも吾輩≠フ一部になりましょうよ」
「そうね、人間の脳も、人工の脳も変わらない機械≠セっていうことがわかっちゃったからね」