「アジアの国々の中で、自力で欧米に唯一肩を並べる事が出来たのは日本だけだ」
「そうだな、正確には有色人種の中で唯一勝ち上がった国が日本だ」
「なぜだと思う?」
「日本は昔から不寛容社会だからだ」
「そのとうりだ」
「弱者を嫌い徹底的に攻撃し、強い遺伝子のみを残して来た」
「ああ、村八分という言葉がある。広がろうとしていた天然痘や黒死病やスタンハンセン氏病になった仲間を不必要なまでに憎悪し、隔離して滅亡させていった。まるでそうする事が正義であるかのように」
「姥捨て山という言葉がある。奇形児という蔑みの言葉がある。片端という言葉がある。死ねという言葉がある。」
「それらは現在のネットへの書き込みに現代風の言葉に変えられ脈々と受け継がれている」
「弱い心、弱い体の人間は意気消沈し、身体と共に消えてゆく。」
「現代でも同じという事だな」
「勝ち残って生き残った者のコミュニティでのみ、慈しみの言葉が交わされ、助け合いの構造が成立する」
「しかし…」
「そうだな、アイピーエス細胞技術が確立されてきた」
「特殊な病気、特殊な形状の人間でも治療が可能になってきた。精神的弱者へのストレスや精神をコントロールできる薬も作る事ができるようになってきた」
「昔の人間はどういう形をしていたの?」
「さあ、パパにもわからないよ」
「ぼくたちはこの形の体に合った心を持っているけど、昔の人間と心の交流とかできるの?」
「さあ、ママにもわからないわよ」
「昔の人が不寛容社会を貫けなかった結果が俺たちなんだってさ」