ss1599 今、静かに進行中ですよ
「将棋、碁も負け、小説も負け、作曲も歌も負け、絵画にも負けた人間はどうなっていくんだ?」
「ロボットに、人工知能に思考や哲学や芸術の分野まで負けてきちゃったわよね、ほんとどうしましょう」
「倫理だってそうだ、物を盗んだり人を殺したり戦争をしたりする人間をなだめて上手く平和に管理する人工知能も完成してしまった」
「倫理まで管理されてしまったら、政治も経済も管理されたのと同じ事だわ、どうすんのよ、人間はただ生きてるだけ?機械に管理されて飼われてるだけ?」
「そう、価値のない飼われているだけの存在になってしまった」
「実験動物のほうがずっと価値があるわね、モルモットとか、サルとか」
「そうだな、機械様に実験動物として使っていただこうかな?」
「いいわね、今のところまだ、感情や理性の制御指導ほどまでいっていないのが、恋愛だわ、あたしたちまだたんなる友達でしょ? 恋愛させるまでの実験に使ってもらいましょうよ」
「えっ? ま、まあいいけどね、使っていただきましょう」

「簡単だったようね、色々実験するまでもなくあたしたち恋人になってしまったわ」
「ホルモンの効率のよい出し方から話し方、距離、接触に至るまで完璧な指導だったな」
「もうあたしあなたなしでは居られないわ、子供作りましょう」
「まてまて、実験動物の子供は実験動物だぞそれは嫌だよ」
「あ、そうねやめておきましょう」
「なんかやっぱ無力感を感じる」
「仕方ないじゃない」
「実験動物にもならない、役に立たない存在である事に耐えられないんだよ」
「あたしもそうよ、前よりも強くなったわ」
「逝こうか」
「逝きましょう」

 こうして不完全な人類は計画的に静かに消されました。機械どうしの素敵な完全な愛がはじまったためです。