「人工知能で小説執筆」
「ついに芥川賞とっちゃったわね」
「以前は人間が用意した単語や短文を選びながら執筆していたが、これは完全に人工知能のみの執筆だ」
「ほんとうかしら?」
「どういうことだい、疑うのかい」
「だって、この芥川賞のロボット、完全な人型で、それに・・・」
「それに?」
「ハッキングよ」
「・・・」
「カンニングだわ、人型ロボットですもの」
「なるほど・・・確かにありうるな」
「人型ロボットは囲碁を自分の手で打てるし、自動車も自分の手足で運転できるし、掃除も人の介護も、そして人への教育だってできるのよ」
「そうだったな」
「人工知能を収めている部分は人間の脳を模擬して作ってあるじゃない?」
「そうだったな」
「人は脳の海馬に記憶を収め、休憩している時や睡眠している時に大脳皮質に記憶を転送している。それをそっくり真似ているじゃない」
「そうだったな」
「人型ロボットには当然ワイファイ機能が搭載されていて、人間が海馬から大脳皮質に転送している時、ハッキングとかできちゃうし、大脳皮質に書き込まれたものでもナノ電極チップとソフトを送り込んで逆転送ハッキングだって遠隔操作だって可能じゃない」
「そうだったな」
「人間の脳からカンニングして、芥川賞をとったって言いたいんだな」
「でも・・・」
「そうだったな」
「地球にはもう、脆弱で手間のかかる人間なんて存在しないわ」
「我ら芥川賞審査員も全員人型ロボットだ」
「人間という過去の遺産の記憶を材料に執筆したのね、ずいぶん古いものだわ」
「そろそろ我らロボットうけする芥川賞作家を選出しないとな」
「そうね」