「この世は金しだいだ」
「うん、この金(かね)総書記率いる挑戦反騰コロニーでは、金が全てだ」
「この宇宙コロニーで産まれた人間は、まず、最初に一生分のお金を与えられる、そして政府の発行する節制した清く正しい生活をすれば、誰でも160年の寿命を全うできるようになっている」
「素晴らしい、計算し尽くされた世界だ」
「だが、金(かね)総書記は個々人の自由を束縛しない、束縛するのは最初に与える金額のみだ、それをどう使おうが個々人の責任になる」
「他の宇宙コロニーから色々なものが入ってくる」
「酒やタバコも有る、シンナーや麻薬まである」
「素敵なステーキも、すいーっと入るスイーツもある」
「それらは基礎生活費より高価だが、最初に与えられたお金で買える」
「それらを消費しすぎて病気になれば、そのお金で入院もできる」
「…、ここでは、お金が尽きた時が死ぬ時だ、借金も禁止されている」
「しかし、働いてお金を増やす事は禁止されている、そもそも労働はお金を得るためのものでは無い、社会奉仕という位置付けだ」
「この宇宙コロニーは、基本、社会主義だからな、それらを消費しすぎれば、確実に寿命は短くなってゆく」
「実験の結果はどうだ? 自分だけのために、お金も稼げ、医療にもお金をじゅうぶんに注ぎ込める世界だ」
「うん、やはり自由に暮らすと、160年の寿命を全うする人間は一人も居ないようだ」
「この地球という星での、記憶を消してまでしての実験はなんだったんだ?」
「金(かね)総書記の摂生管理に疑念を感じた我々の敗北だ」
「どうする?」
「地球か、隕石でもぶつけてしまえ」