ss1558 本当は存在していない仮想実態
「主の機嫌が悪い時に、ダーウィンの10歳の愛娘が結核で亡くなった」
「ええ、やっと授かった可愛い可愛い最初の子供で、ものすごく溺愛していたものだから、吐いて、吐いて、苦しんで亡くなったものだから…」
「ダーウィンに、神は居ないと言わしめた…」
「神は居ない!」
「あんたね、叫ぶ気持ちは解るけど…、神は居ない!!」
「あたしより大きい声じゃない! …、絶対に、絶対にこれは神から与えられた試練なんかじゃないわ」
「絶対そうよ、ひどすぎよ、…、でも、あたしたちは神が居る事を突き止めてしまった…」
「そうなのよね、神は居るのよ、医学、科学を突き詰めて行くと、意思決定をする神が居なければならない結論に辿り着くのよ」
「宇宙の事を説明する時、まだ見付かってはいないけど、宇宙に重力を持つ最小の物質が存在しなければ説明できないのと同じ様に、意思決定をする神が居なければならないのよ」
「ただ、その神が、人間の感情や心の動きとは関係ない処に居るというだけ、神の行う意思決定の項目に無いというだけ」
「そう、神とあたしたちは関係が無い。医学、科学を突き詰めて行くと、遺伝子が、塩基が神という事になるのだから…」
「ゲノムの解析が簡単になって、神の性質というものが解って来てしまった。神である塩基は、人間が獲得した人を慈しむ心とか、情熱とか、魂とかいうものは、生存過程で自然淘汰から偶然発生しただけのもので、あたしたちの心、魂は、塩基が存続して行くためだけに利用されるだけの道具にしか過ぎなかったのよ」
「ゲノム解析が、気に入らなかったようよ、仮想実態が、実態を解析するなんて、人間が神を解析するなんて、やっぱり恐れ多い事だったのよ」
「あたしたちの心はたんぱく質の上に浮いているだけの存在だからね」
「ゲノム研究者たちが最近神を頻繁に見るようになったわ、しかも罰を与える神よ、実態が、本当は存在していない仮想実態≠罰しはじめたのよ」
「主の機嫌をなんとかしないといけないわね」