「珍獣オカピの首は、馬や鹿と変わらない長さだが、麒麟のように首が長くなれる予兆構造になっていて、長くなる遺伝子も見付かっている。高いところの植物を食べなくてもだいじょうぶな環境に何百万年も居てもだ」
「はい、それから生きた化石と言われるシーラカンスですが、陸上に上がって海に戻った生物でもないのに、陸上に上がろうと試みた生物でもないのに…、ゲノムの解析から、空気中で匂いを嗅ぐ遺伝子と、手足を作る遺伝子が見付かりました。何億年も深い海でほとんど移動せずに暮らしているにもかかわらず、それを捨てずに維持し続けています」
「これはどういう事だ?」
「はい、生物は環境の変化に必要に迫られて自然淘汰進化、偶然による突然変異進化して来たのではなく、何者かに意図的に遺伝子を操作されて能力を発展進化させたか、ラマルクの言うように、こうなりたいという獲得形質によるものではないかと…」
「そうだな、ダーウィンの進化論は結果的表面的には正しく見えるが、肝心な確信の部分で間違っていた事になる。遺伝子はかなり計画的≠ナ能動的≠セ」
「はい、ゲノムが簡単に解析できる時代になって、生物の遺伝子には、未知の環境の変化にあらかじめ備えて対応できる、無駄とも思えるほどの能力向上遺伝子がたくさん見付かってきています」
「ありえない事だ…、遺伝子そのものに未知の将来に備える明確で実現可能な設計図と、それを組み立てられる高度な意思と技術があるという事になってしまう…」
「宇宙空間でも、クマムシは生きられますが…」
「ああ、知ってる、仮死状態になってだろ」
「人間の遺伝子の中に仮死状態ではなく、宇宙空間で普通に生きられる遺伝子が発見されました! 宇宙線や温度の差にも耐えられます」
「たんぱく質は四十三度で固まるぞ、凍て付きの限界温度もすぐだ」
「もちろん、人間と言うたんぱく質の乗り物とは、乗り換えるようです。完全に塩基を守れる材質の体に変えるようです。人間が産業革命のころからプログラム作りが始まっています。もうかなり具体的で完成間近な優れた設計図です。人間が地球を滅ぼす事が判っているかのような、用意周到な準備行動です」
「…、す、捨てないでくれー!」