ss1538 かすみがせきの決断
「今の手厚い高額の年金制度は、定年後10年以内で死ぬ事を前提としたものだ」
「そうですね、年金制度を作った当時、60歳定年で67歳から69歳がどの都道府県でも平均寿命でした」
「しかもどの都道府県でも、最低でも、30人以上の若者の保険料でたった一人の老人の年金をまかなっていた」
「あたしたちが年金生活になる頃には、70歳定年で百歳くらいまで生きれる医療になってるはずだけど、若者は探すのが困難なくらい少なくなっているんだそうよ」
「どうすんだよ」
「非正規社員が多く、保険料を今の時点で払えてないほど貧しい人たちが居るから、保険機関はそれを理由に払わないんでしょうね」
「…、それにしてもまだまだだな」
「でも、地球上でこの国だけのようね、国民総年金加入義務国は…、他の国は基本的に民間年金会社への任意加入で老後は自己責任、自由生活だわ」
「でも、その自由を維持できるほど老人に対する生活費、医療費は安くなっている、しかし我が国では今更切り替えての運営は不可能だ、払ってきた人たちの不満が爆発する」
「そこでわが社が売り出す新製品ですね」
「うん、画期的な食料品だ、安くて貧しい老人でも買える」
「〝かすみ〟ってネーミングですね」
「ああ、〝かすみ〟ってネーミングだ」
「仙人が食べるやつですね」
「ああ仙人が食べるやつだ」
「仙人って、どろんって消えますよね」
「うん、どろんっていうか、かすみのようにね、薄まって散っていくようにかな? 誰にも気付かれないようにだな」
「かすみがせきからの依頼で作った食料品ですよね、明記はしませんけど」
「うちはゲノムを解析して分解酵素技術を取り出した会社だ、〝かすみ〟がそのスイッチを入れる」
「地球に優しい処理ですね」