ss1533 あんたが大将
「地球上の生物のほとんどは左右対称の体だ。そして重力が有るために、その左右に加えて、上下・前後の概念があり、その認識を自前の優れたセンサーで感知出来るようになっている。」
「そうですね、凄いメカニズムなんですが、でも、宇宙時代になりました。なんか不便ですよね、あたしたち」
「そこでだ、これから産まれる我々の子孫は無駄なパーツを減らし、遺伝子操作で宇宙時代に合った身体にする。進化するのを待っては居られないからな」
「はい、そうですね、さっそく遺伝子を書き換えたプロトタイプの子たちが出来上がりました。この子たちから新人類を選びましょう」
「う〜んと、まずは左右非対称の子だな、物を持ったり肉体労働する訳ではないから、手も足も一本づつだな、指も最近の人工知能入りのパソコンの操作なら一本で充分だから、これでよしと、手は頭から、足は胴体の延長上に有って機能的になっているな、各関節もロック箇所がなく、前後左右上下関係なく曲がり全方向に移動可能になっているな、基本的に歩く必要が無いからこれでよし、目は手と足の甲に1つずつ付いていて、甲を動かして360度全て立体視できるんだな」
「はい、次の子です。」
「ああ、定番の球体の子だな、なんにも付いて無いね、単なる肉団子だ、真ん中に丸い脳が有るだけで、後は拡張プラグインと超能力で問題無く人間として生きてゆける。」
「今回の最後の子です。」
「えっ、この子は!!」
「逆を行ってみました。生物には多様性が必要でしょ?」
「ま、まあそうだが、左右対称どころか、前後対称? だと?」
「よく見てください、上下にも対称です。もちろん上下の概念は有りませんけどね、左右も前後の概念もね」
「現代版の、千手観音を超える仏像だな、これは…、パーツも凄まじく無駄に多い…」
「結構、有力候補ですよ、波瀾万丈になるかも知れない宇宙時代を…、たくましく生き抜ける真の姿かも知れません」
「う、うん…、あんたが大将!」