「衛星としては凄まじく巨大な月が有るから人類は、地球の生物は安定して生きていける」
「そうね、地球の地軸の安定には無くてはならない存在だわ、月の引力の影響がなければ、絶対に地球の生物は破滅だわ」
「その重要な月が1年で3.5センチも地球から離れて行っている。しかも年々速度が速まっているようだ、いつ急速に離れるかも知れない」
「なんとかならないの? 今まで地球が氷の星や灼熱の星になるのを防ぎ、巨大隕石の衝突からも楯として守ってくれていた女神の星よ」
「安定せず無秩序な揺らぎ続ける地軸になれば、潮の干満も無くなり、凄まじい気候変動の末に、やがて大気も海も宇宙に拡散していって無くなってしまうだろう」
「今の速度より増して行くならなら、ぜんぜん太陽の寿命の時まで持たないわ」
「さすがにそれまでには人類はなんらかの生存方法で、星の環境に頼らない空間を手に入れているだろうけど、急激に月が無くなればそれまでだ」
「月の裏側に、核による推進力で、地球から離れる月を引き戻す施設の設置が完了したのね」
「うん、正確に1年で3.5センチ戻してゼロにする計画だ、今日それを実行する」
「あっ光った、地球からも見えるじゃない、裏側なのに」
「やばい、施設ごと爆発したみたいだ、地球にぶつかるぞ!!」
「…、これがほんとうの運の月ね」
「うん…」