「エネルギーは物質に変換出来るし、物質もエネルギーに変換出来る」
「電気の変化があたしたちの心だけど、そう考えるとあたしたちの心も物質化、実体化出来るのかしら?」
「どうかな、人間の心はパソコンで言うソフトウエアだからなあ…」
「そうね、ハードディスクである脳が死んで分解されたら、その上で動いていた電気の変化の集合体なんて残らないわよね」
「パソコンソフトの中にはインストールという手順を踏まずに、ソフトを別のパソコンにコピーするだけで操作履歴、メモリ込みで動かせるものも有るよ、人間でも可能じゃないかな? つまり人間の精神を普通に新しい脳にインストールという形で入れると、胎児の段階に戻されてしまい、一からまた記憶を紡いでいかないとならないけど、コピーなら問題ない」
「自分の記憶を保持したまま転生輪廻が出来るという事なのね」
「うん、自分のクローンを作り、普通に成長させて、大人になった時にその子の紡いだ記憶部分にオリジナルである自分の心を上書き保存しても良いだろう。この場合、クローンの心を結果的に殺す事になるから相当の決意が必要になるけどね」
「って、もうその技術確立しているのね」
「うん、この僕の体と脳はもう既に三体目だよ、老衰で一回、事故で一回、ハードを潰しているからね」
「完全に消し切れなかったのね、記憶以外のもの? 声の使い方や癖が微妙に変化するわ、…、やっぱり記憶も少し残ってる様ね」
「うん、多重人格者になっちゃったよ、悪い事は出来ないなぁ」