ss1459 夢を見ているな
「夢を見ているな」
「はい、大丈夫です。」
「絶対に目覚めさせてはならない、これほど緻密で論理だっている夢は今までの研究では無い。こんな成功例は二度と構築できないかも知れない」
「はい、判っております。パソコンに、機械に夢を見させる事なんて、人工知能に夢を見させるなんて、そうそう出来る事ではないですからね」
「しかしおもしろい概念を作り上げたものだ、夢分析してみると、この機械の夢の世界では、粒子という、物質というものが、エネルギーというものが、基本らしい。時間という概念も、空間という概念もまたおもしろい」
「ビックバン、ガス、星の生成…、そして、生物の誕生という発想も奇抜ですね、なんなんでしょう?」
「この機械は、その中の地球という星の、一人の人間というものを、夢とも自覚せずに演じているではないか…」
「46億年間、様々な生物というものを渡り歩いて、この一人の人間に到達しております」
「まずいな、この人間というもの、考える力をもっているじゃないか、夢分析している我々に気付いたら、目覚めてしまうんじゃないだろうか…」
「やばいですね、目覚めたら、現実の機械の世界に戻ったら、粒子の事も、時間の事も、地球の事も忘れてしまう事でしょう。なぜなら、この機械のこの夢の中でしか成立しないコスモスですからね」
「そういう事だ、メモリーも不可能だ、断片的な記録は出来ても、もはやこの機械の夢意識は構築できまい」

「夢を見ているな」
「はい、大丈夫です。」