「虫歯って親が自分の虫歯菌を受け渡さない限り、子供は一生虫歯とは無縁で生きていけるっていうのには驚いたわ」
「そうね、そうみたいね、赤ちゃんは基本的に無菌で生まれてくるのね、赤ちゃんには口移しで食べ物をあげちゃいけないのね」
「でも、有益な菌も有るわ、コアラなんか毒素の塊りみたいなユーカリの葉を食べるけど、腸内細菌で解毒するんだけど、その菌は赤ちゃんには無くて親の糞を食べてその菌をもらうそうよ」
「親の排泄物を食べる…、草食獣の多くがそうみたいね、牛や豚の草を分解する腸内細菌の能力も凄いって聞いたわ、それからアマゾンに住む人間の部族で、一生一種類の芋だけを食べて、しかも健康的に生きている人たちの腸内細菌も特殊化してて凄いそうよ、その腸内細菌も親から子へ渡さないとだめのようよ」
「そうね、その他にも皮膚を守る細菌とか、目や粘膜を守る細菌とか、親からいろいろ貰わないと、他の虫歯菌のような悪意の有る毒素菌に負けて病気になってしまうわ」
「あっ、先輩宇宙人が来たわ」
「やあ、地球人諸君、きみたちも宇宙人になったね、そこで良いものを持って来たよ」
「まあ、ありがとうございます」
「宇宙空間を旅するだけなら必要ないが、宇宙生物の居る星に行く場合はその星に合った菌に感染する必要があるんだ、そこで代表的なものをいろいろ持って来たんだ」
「まあ、ありがとうございます、ちょうどその話をしていたんです」
「あれ? きみたち、もう既にいろいろな菌に感染してるんだね」
「いえ、先輩宇宙人さんのように完全に無菌状態を作れて、病気を無くしている訳ではないんです」
「なるほど、我々も病気の克服には、母星全体を完全に無菌状態にするには時間がかかったからね、しかし…、未開の星に探検に行くには今の君たちの状態で問題ないようだ…、いろいろ菌を持って来ても無駄だったようだ」
「まあ、じゃ逆にその完全に無菌状態に出来る技術で、あたしたちの虫歯菌だけでも除菌してくだされないかしら?」
「いや、その菌…、けっこう未開の星で有効だよ、口の段階で病気を取り込むのを防いでくれるよ、一級宇宙服無しでも大丈夫なくらいだ」
「…」
「…」