「人間も動物も、外界からの刺激で一番早く認知出来るのは音≠謔ヒ」
「そうよね、視覚より先だし鋭敏だわ」
「草食獣は特にそうだけど、耳を動かして音の方向をより確実に認知出来るんだけど、あたしたち人間は耳を動かせないから、耳のひだを使って音の反響の差で上下や後ろ、前の音を認知しているのよね、脳の音の分析能力に頼っているわ」
「そうなのよね、左右の音は耳の位置の差で耳のひだがなくても音の方向がわかるけど、それ以外は難しいものね、フクロウなんて左右の耳が上下にずれて付いてて、全ての方向の音にひだ無しでも対応しているわ」
「しっ」
「あっ来たわ、耳だらけの宇宙人!」
「遠くから超小声で言っても聞こえてるわよ、失礼ね、うふふ」
「ご、こめんなさい」
「で、でも目がなくて、かわりに耳が大小合わせて十個も付いてますが…、そんなに必要なんですか?」
「うふふ、あなた妊娠したてでしょ? 音で手に取る様に詳細に見えるわよ」
「ええっ! まだ形もはっきり分化してなくて、動いてもいない段階だと医者が言っていたのに判るの?」
「となりのあなたわ…、まあ、小さな癌が一つだけ発生しているわよ、医者に行きなさい、今なら完全完治するわ、まあ十年くらいほっといても症状は出ない段階だけどね」
「…」
「…」
「あたしの十個の耳と脳による音の分析能力に驚いたかしらん、うふふのふ」