ss1406 キャパシティー
「この都市の住民はよく働くな」
「この都市の住民は生まれた時から一生分の仕事量がビックブラザーによって決定していて、その人が質的・量的にどれほどの負担に堪えられるかという事をぎりぎりのところまで計算して仕事を与えている」
「この都市の住民は過酷だな、って、俺たちもこの都市の住民なんだがな」
「うん、過労死ぎりぎりの設定、薬を使わないでぎりぎり働ける設定を、個々人の能力に合わせて決定出来ているのにも驚くが…」
「遺伝子ゲノムが全て、個々人レベルで、解析出来る時代になったからだな」
「職種も、仕事の時間帯も、食事の量、食事のタイミングも、睡眠時間帯も、睡眠量も、トイレもセックスも全て個々人レベルで計算し尽くされている」
「そうだな、綿密な、綿密過ぎるビックブラザーの設定によって、この仕事量は過労死ぎりぎりな筈なのに、全然ストレスというものを感じない」
「うん、それどころか職種も遺伝子から読み取った最適なものだから、不満も無いし、楽しいから何十時間でも続けて働けてしまう」
「それからビックブラザーが選んだ配偶者も程良く遺伝子が離れていて、お互い最高のセックスが出来るし、子供も遺伝病や奇形児になる心配も無い」
「良い事尽くめだな」
「何世紀か前まで、カオスな資本主義社会というものが有ったそうだ、失業者を多く産み過ぎ、収集がつかなくなって崩壊したそうだ」
「でも、良い教訓になったって聞くよ、自由の代償とかいう」
「本当の自由は個々人の遺伝子に沿った生活の中に有るのにな」
「仕事好きな住民の住む、キャパシティーというこの都市は、永遠に崩壊する事はない無い」