ss1394 狼少年
「ぼくは狼少年です」
「ああ、狼が来たって何度も嘘をつく少年だね?」
「違いますってば、満月の夜に僕は狼になるんですってば!!」
「ふ〜ん、狼にね」
「信じてませんね、ほんとうなんですよ、今晩満月じゃあないですか、証明しますよ」

「ほら、狼になったでしょ」
「ふ〜ん、狼にね」
「感動がないですね、狼少年、いや、狼男ですよ!!」
「かわいいから犬っころに見えるよ」
「あのね、狼ですってばよですよ! まあ犬になったって驚くでしょ!」
「ほら」
「ぎゃっ! おじさんも狼男だったの!!」
「そんなに怖がらなくてもいいよ、ほら」
「うわっ、町中のみんなが狼になってる」
「科学技術局がさ、絶滅した日本狼を復活させようって話になってさ、この町は日本狼だけどさ、隣町は違うよ」
「待って、ぼくが当てるよ、う〜んと、隣町の人たちは、う〜んと、日本カワウソでしょ!」
「はずれ」
「ええーうっそー」
「うそ、カワウソ」
「…」
「ごめんごめん当たりだよ、隣町の人たちは水を浴びると絶滅した日本カワウソになるんだ」
「おじさんは大人になっても狼少年なんだね」