ss1382 チャイルド・プア
「チャイルド・プアって言葉まで作ったか」
「子供に対する親の責任、国家の責任を果たしていない。果たせなくなっているという事なのね」
「子供に対して100パーセント責任が有るのが二歳までとされているよな」
「そうね、一生の個体能力の全てが決定してしまう最重要な期間とされているわよね」
「この時期に脳神経の基本的生え方、基本身体能力の全ての決定が完了してしまい、修正が出来なくなる」
「100パーセントの責任という言い方は大袈裟じゃない事が科学的に証明されているのが怖いところね」
「次に、七歳までに基礎的な運動をさせないと一生オートバランサーがきかなくなる」
「ええ、その時期に監禁して狭い部屋で運動できない生活をさせてしまうと、一生絶対に自転車に乗れなくなってしまう、もちろん立って歩く事もままならない」
「七歳に満たない子供が乗り物酔いをしないのは目や内耳が未完成だからよね、七歳までに運動させないとそれらが未完成のまま決定してしまう」
「親のワーキング・プアや失業がチャイルド・プアを生んでいる訳だけど、最低でも七歳までまでは完全な保障が欲しいところね」
「人間としての、生物としての基礎が決まってしまう大切なこの時期さえ十分な保障があれば、やり直しが出来る社会になった時、社会復帰が出来る」
「そうよ、いくら不況だからってこの大切な時期を親や国家がないがしろにしてしまったら、ほんとうにこの国は滅びてしまうわ」

「新薬クマムシ=H なにこれ」
「国家は思い切って七歳までの子供の十分な完全保障、能力の高い子供作りに踏み切ったけど、その後の生活や教育や学校給食まで無料には出来ないと言っている」
「まさか、冷凍保存はお金がかかるし場所も必要だから、クマムシの乾燥休眠能力を…」
「そういう事だ」
「この子達、基礎能力が高いとはいえ、いつまで七歳のまま乾燥休眠させられるのかしら」
「クマムシの乾燥休眠能力は何百年とも何千年とも言われている」
「…」