「真犯人が見付かったね」
「いやまだ新犯人だ」
「詳細に痕跡を調べて今までの人達が全員無実だと完全に判ったけれど、全員程度の差こそあれ、一時的にでも犯罪を認めてしまっていた事には驚いたな」
「ほんとうだよ、こんなんじゃ他の事件でも相当数の冤罪が有った事を、有り続けて来ている事を証明してしまった様なものだ」
「俺は今度の新犯人、絶対真犯人だと思うよ、だって最初から黙秘を貫き全然犯行を認めないじゃないか」
「え?」
「つまり守るものが何も無いという事だよ、人間的弱みは何も無い」
「なるほど、世を捨て、人間を捨てた様な行為をしている真犯人には何も捨てるものがなく、何も守るものが無いからという事か」
「どんな凶悪な事件でも真犯人の多くは捕まっても口を割らないから、刑に服する事が少ないのかも知れない」
「そうだな、証拠なんて有っても無くても認めなければ何にもならないからな」
「そう、突き付けられても脅されても認めなければそれまでだ、それを知っている元刑事で犯罪を犯した人が完全な証拠が揃っているのに犯罪を絶対認めないのが良い例だ、その段階で全てが止まる事をよく知っている、そして弁護士を呼ぶタイミングも良く知っている」
「しかしこの事件はなんだったっけ?」
「あのなぁ、今月から施行されたダウンロード違法化で違法ダウンロードした初の事件だよ」
「あ、ああそうだったな、しかしこんなくだらないというか恥ずかしいタイトルの音楽を…、あの脳天気な地球という星の日本という極東地区のだな」
「メイドの次は添い寝かよ、こいつら…、もしかして口を割らない最大の理由はそれかもよ」
「真犯人の気持ちがよく解るよ」