ss1363 インナースペースはいんな〜
「人間の脳は、ひとつの宇宙に例えられることが多いわね」
「そうね、実際そうよ、脳の中にこれだけ複雑な思考が飛び交い、世界を造り、活動しているんですもの」
「そう、ヒトの数だけ宇宙が有るということよね、あなたとわたしの宇宙は似ている様で違う宇宙なのよね」
「さみしいこと言わないでよ」
「そうね、これから壮大な実験も始まることだし…」
「脳移植ね」
「そう、脳に脳を移植して行って巨大な脳宇宙を創り上げる壮大な計画よ」
「ええ、人間の脳は脳だけなら160年でも200年でも生きると言われているわ、蓄積した知識や技術を体の寿命とともに消してしまうのはもったいないものね、そこで巨大な脳のデータバンクを作る計画が発動したのよね」
「そう、巨大なデータバンクにするだけ、トラブルが予想される個々人の生きた証、個性や生活の記憶は消されるわ」
「そりゃそうよね、複数の人間の記憶が合わさったらプライバシーも何もなくなっちゃって、内部で宇宙戦争とかにもなっちゃうかもしれないものね」

「脳移植手術進んでる?」
「ええ、手術はうまく行ってるんですけど…」
「まさか、記憶が、生活して来た記憶が消しきれないの?」
「そうなの、知識や技術だけを採ることは所詮不可能だったのよ」
「…、宇宙戦争にならないわね。」
「穏やかだわ。」
「無理してこんなことしなくても、あたしたちは生まれる前は…、そして死んだ後も…」
「そういうことなのね」