ss1296 長寿のジレンマ
「長寿になればなるほどそれまでに殺した命の数は莫大だ」
「そうね、1食で殺す生命の数を1つだけとしても1日3食として3つの命、1年で1095の命を犠牲にしていて、80歳だったら87600もの命を殺して奪って来た事になるわ」
「贅沢な食事ばかりしている奴はその何倍にもなる」
「キャビアとかね、タラやイクラの卵とかも1つ1つの命として考えたら80歳だったら天上知らずだわ、でもヒゲクジラが1口で食べる何万というオキアミの命の数と比べればかわいいものかもね」
「とにかく一刻も早く神様の設定した生命を維持するのは生命という恐ろしくも凄まじい戒律から完全に脱却しなければ心が折れてしまう」
「優しいのね? それとも偽善? まあips再生医療で他生物の体の1部を貰って食べてすぐに再生させるというあんぱんまん技術が確立して普及してはいるけど、効率が悪くて費用がかかりすぎるわ」
「そこでだ、自分自身の細胞を培養して食料にするのだ。自分の古くなったパーツを自分の培養細胞で移植するだけじゃなくて、食料にもするのだ。モツやレバーの部分再生も良いが1つの生命として再生してまるごと食べるようにしても良い。再生だけだから、移植しなくてよいから費用も安い」
「胎児や嬰児たちを固めたキャビアってかわゆくてやわらかくておいしそうね、自分自身を食べるわけだから心も折れないし完璧ね」
「うん!」
「自分自身を殺して食べるって、自殺とは違うのよね」
「違う違う」
「その食材を育てるのも自分自身の再生した命なのよね」
「もちろん!」
「長寿ばんざい!」
「おう!」