「そのむかしベビーブームというものがあったらしい」
「すごい響きね、今じゃ考えられない言葉ね、人口の半数が老人になったこの時代ではね」
「むかしは母子が公園で遊び始めるのを公園デビューとか言ってたそうだよ」
「それは今でも使っているわ、どの公園も老人たちに占領されてて、極稀に幼児を連れて母子が来ると老人たちに大スター扱いよ、涙を流して崇めだす老人も居るわ。ニュースになることもあるじゃない。」
「あ、そうだったな」
「ベビーブームを起こすにも今現在子供を作れる年代の若い男女がほとんど居ないわよ」
「人間はサルの仲間では珍しく毎年子供を作れる構造で、一生のうちに数十人の子供を作れるという多産タイプという事を忘れてはいないか?」
「そうだったわね、ホモサピエンスの繁栄は他の近人類や滅びた異人種と比べてもすさまじい繁殖能力があったからよね、脳の能力だけじゃないわ」
「でもその能力を使わなくなった。このままだとほろびる。若い男女が少ないなら一年ではなく、もっと間隔を狭めるように現代医学の総力をあげて対処しよう」
「医学の力、すごい技術になったけど、それを確立し安全性を立証するのに時間がかかりすぎた。子供を作れる年代の若い男女が世界で一組だけになってしまった。。。」
「でも、やっとその技術が認可されたわ。アダムとイブは毎月子供を作れるようになったのよね。義務付きだけどベビーブームの再来だわ。卵子の無駄もなくなって生理もなくなったわ。人類みなきょうだいになるのね。」
「そうだ。人類みなきょうだいになる。」