ss1233 68億人
「68億人の遺伝子ゲノム情報チップ。そして三次元投影装置… べつにリアルに生きる必要なんて無いんじゃない?」
「そうよね、現実の世界は物を食べないと生きていけないし、格差社会だし、レイプされたり殺されたりするけど… 自分の遺伝子ゲノム情報チップとこの三次元投影装置さえあれば思い通りのバラ色の人生がおくれるわよ」
「そうよ、自分で自分の望む仮想現実の中で幸せに暮らせるのよ!」

「最初は楽しかったけど…」
「そうね、データを消去しない限り遺伝子ゲノム情報チップは永遠不滅で…」
「あたしたち仮想現実で何十億年生きて来たかしらね…、あたしたちあの時の68億人のままで全員リアルを捨てて、色々な人生を自分たちで操っておのおの色々な形で68億人全ての人と交流したけど、無限に有る時間と無限にやり直せる人生で飽きてしまったわ」
「そうね、結局みんな何回も似た様な人生を選んで、68億人の人と交流したけど何回も色々な形で会ったとしても飽きるものだわ、何十億年も生きれば68億人全員の気持ちや行動もわかってしまうからね、意外と少ない数だわ」
「仮想現実だからその中で子供を作っても、その子供は68億人のうちの誰かが交代で演じてくれるだけだからね、新しい個性が生まれる訳じゃない。それに食べなくても生きていけるから、生きるのに努力も必要じゃないから家族意識も無い」
「あたしたちがリアルで生きていた時代、その時に考えていた天国というのが今のあたしたちの状態と考えると、天国ってつまらないところだったって事になるわね、死ななくてなんでも思い通りで…」
「なら、仮想現実で暮らす時、あたしたちが永遠不滅の遺伝子ゲノム情報チップである事を全員が忘れるように細工したらどうかしら?」
「そうね、そうすればはらはらどきどきのリアルに生きていた時代に戻れるわ、そしてそのリアルな仮想現実で死んだら、この全てを知っている世界に戻れる様にするのよ」
「って、転生輪廻ね」

「ちょっと待ってまさか…、今の遺伝子ゲノム情報チップで生きて居るというのも『真実』を忘れている状態で、ほんとうはもう一つ上の世界が有ってそこに全てを知っているあたしが居るとか…」
「有り得るわ、たまねぎ状に『現実』と『仮想現実』が上方向にも下方向にも無限にあったりして…」