「保険の利く小児癌の中には大人まで生きられないと判っていながら、その短いほんの数年の生涯の治療のために数千人分から数万人分の一生分に相当する健康保険料を使ってしまう事がある」
「小児癌になった本人自身も苦しみの毎日だったり植物状態だったりするわよね」
「不幸な事ではあるが、上限を決めないといけないな、環境汚染で小児癌になる胎児が増えてきた。このままではこの国の医療は崩壊する」
「そうね、政権が変わって国民に媚びるために小児癌だけじゃなくて殆どの申請されていた難病が保険の利く病気に認定されてしまったからね」
「小児癌を含む難病患者を消すようにと、『指令』が来ている。気付かれない様に旨くやれと…」
「『指令』ね、この国の医療を維持するためには仕方ないですよね」
《『指令』が来ました》
《来たか、可愛そうだが地球人は宇宙人としては肉体的にも精神的にも不治の病と診断されている。今彼らは宇宙に進出しようとしているが、このまま宇宙に出れば宇宙の成熟した秩序を犯す事が確実だ。無駄と判っている治療を行なえば宇宙健康保険は崩壊する。そろそろ消えてもらうしかないとは思って居たが…》
《宇宙人の一種としては地球人は不治の小児癌にかかってしまった胎児と言ったところですからね、『指令』は宇宙の治安を守るために施行されなければなりません。宇宙に出る前に堕胎させるしかありません。》
《施行するほうは辛いよな》