多様化した未来の地球で、百人の裁判員が一つの裁判に挑もうとしていた。
「異星人犯罪も増えて来たな」
「そうね、あたしたち裁判員ももっと多様性が求められる時代になって来たのよ」
「今回のこの異星人も凄いよな、インベーダー行為は正統な行為だと主張している」
「そうね、彼らは自分達が黒船と同じだと思っているのよ、高度な文明文化をくれてやるから受け入れろって事なのよね、しかも強引に戦争を仕掛けて来ているわ」
「いくら高度な文明文化でもそれを便利に使いこなせる脳と体を地球人は持っていないし、過剰に発達した科学文明はかえっておせっかいであって幸せになれるとは限らないんだよね」
「うむ、この異星人はおせっかいなだけで、ただ困った事にそれが彼らの星の正義の常識であって強引にインベーダー行為をしているという自覚が無い」
「でもここは、なんでもありの『自由』な地球だよ、昔のように地球人だけで地球は成り立っていない」
「そうだったな、地球の公安秩序を保つ為の裁判にするか異星人を含む個々人の立場にたって裁判をするかなんだよな」
「人生は一度きりよ、ここ地球は宇宙でただ一つの『自由』の実験星に選ばれているのよ」
「そうだったわね、考える事無いわ個々人の立場に立って全ての裁判をするべきなのよ」
「この異星人は産まれたらすぐに他の星へのインベーダー行為の学習が有って義務教育になっている。だから当たり前の行動として地球に戦争を仕掛けているんだ」
「つまり当たり前の正統な行為なのだから彼らの立場に立って考えると犯罪ではないという事じゃないの? 簡単な事だわ、裁判する事事態が不当な事じゃないの?」
「そうだな、不起訴釈放!! 起訴するんだったら地球への侵略の仕方を問うべきだ」
「侵略戦争に犯罪もなにも無いのだが… 『自由』の実験星に選ばれた地球は次元と時間も自由に使える事になっている。つまり個々人の倫理観に合わせた、人の数だけの事実上無限の数のパラレルワールド裁判を開けるのだ」
「公安に合わせた裁判や戦争に勝った星に合わせた裁判ではなく、個々人の生まれて来た環境や教育に合わせたきめ細かい裁判が可能なのがこの『自由』の星地球なのよ!」
《あ、どうも。インベーダー行為をしているうちうじんです。》
「あなたは地球に宇宙戦争を仕掛け、たった一人で数億人の地球人を殺しましたね」
《はい》
「わかっていますね、侵略行為で殺した数億人の地球人に対しては勿論不問ですが、いっしょに居た一匹のペットの命まであなたは奪ってしまいました」
《はい、申し訳ありません。地球人の手の中に隠れ見えなかったとはいえ、私は重大な犯罪を行なってしまいました。罪を償わせていただきます》
異星人は目にいっぱいの涙を浮かべ、一匹のペットの命を奪ってしまった事を心の底から反省していた。寛大な温情判決が下る事だろう。