ss1125 円偏光
「どうやらやっと地球人も宇宙の支配者である我々の存在に気付いたようじゃな」
「うむ、地球人が地球から1500光年離れたオリオン大星雲の中心部を観測して、ついに我々が宇宙を操作している事に気付いた」
「たんぱく質の材料になるアミノ酸は、立体構造に『右型』と『左型』があり、右手と左手のように、互いに重ね合わせられない。地球の生物は左型のアミノ酸でできているが、通常の化学反応では左右ほぼ等量ずつでき、なぜ地球の生物にアミノ酸の偏りがあるのかは大きな謎だった」
「そして地球人は我々がアミノ酸をどちらか一方に偏らせる『円偏光(えんへんこう)』という特殊な光が、太陽系の400倍という広大な範囲を照らしていることを突き止めた。この領域には右型のアミノ酸を壊して左型ばかりにする円偏光と、右型ばかりにする円偏光の2種類があるが、太陽系のごく初期に左型ばかりにする円偏光を照らしてやった」
「うむ、それでその『左型』のアミノ酸をRNAが拾い上げ、そのRNAを元に地球の全ての生物のDNA分子の二重螺旋は型反転した右巻きとなった」
「地球人も薄々気付いているようじゃが、もちろんDNA分子の二重螺旋が地球人とは逆巻きの左巻きの星系があり、相容れない種族が宇宙に居るという事をな」
「宇宙の支配者である我々が円偏光により操作してやらなかったら、一つの星に右巻き遺伝子の生物と左巻き遺伝子の生物が出来てしまっていた。種の分化の違いならともかく根本が違う生物の混在がどれほど恐ろしい事か体験せずにすんでおる。まあ化学反応で精製し『右型』のアミノ酸も混入してしまった妊娠鎮痛剤でサリドマイド奇形児が出来るという事件もあったがな」
「うむ、というか円偏光により操作しなかったら初期の段階で猛烈に反発し合いどの星もDNAまで行かずにせいぜいRNA止まりのウイルスだけの星になってしまった事だろう」