ss1124 真・履歴書
 ちょっと現代とは違和感のある、ちょっとみすぼらしい青年が顕われた。
「少年、この履歴書に君がこれからなりたい自分の経歴を書くんだ」
 静かに言うが、その青年にはちょっとした必死感があった。
「おにいさん誰?」
「誰でもいい。いいからお前がなりたい自分の経歴を書くんだ」
「これは魔法の履歴書なんだね?」
「そうさ、見た目はなんの変哲も無い履歴書だが、お前にとって書いた通りの未来が拓けるんだ! 明るい未来が拓けるんだ! 医者でも総理大臣でも宇宙飛行士でも何にでもなれるんだ」
「おにいさんは未来の僕なんだね」
「そうさ」
「うざいよ」
「えっ…」
「努力しないで立派な経歴を得ようなんて10年早いよ」
「お前自身の未来なんだぞ、俺は平凡な人生なんておくりたくないんだ」
「平凡でよいじゃん。普通が1番だよ」
「頼むよ、この時代の10歳のお前じゃないと効力が無いんだ」
「知ってるよ」
「えっ…」
「おにいさんで10人目だよ」
「10歳のお前からパラレルしたのか?」
「そうだよ、おにいさん以外の未来の僕は元に戻してくれって言ってたよ」
「言ってはいないだろ」
「う、うん言ってはいないけどね」
 そこには魔法の履歴書を咥えた鳥や魚やいろいろな動物が徘徊していた。