「やはりフィルターを通して記憶を残して行こうか?」
「そうですね、無限の記憶領域があるUSBフラッシュ9.0には全ての記憶が残せますが、毎秒見ている画像や音声を記録し続けてもしょうがないですからね」
「短期記憶は人間の場合自動で消していっているわけだから、それに似せたアルゴリズムのフィルターをかけるんだよな」
「そうです。ちゃんとこれは重要と判断した記憶は長期記憶として残せます。しかもインデックスを付ける事も出来るので生身の脳よりも容易に欲しい記憶を呼び起こせます」
「もともと人間の記憶からスタートさせるわけだが、その自分の意思で記憶の選別も、そして美化も出来るんだな」
「そうです。もともと彼は記憶力が良いのに精神に障害をきたさない性格の人ですが、やはり記憶の選別が自分で出来る様にしておいてあげたほうが良いでしょう」
「そうだな、失敗した記憶とかずっと残しておいてくよくよしているなんて良くないからな」
「おお、俺はアンドロイドになったのか、でも精巧なアンドロイドで今までと違和感無いし、自分の意思で記憶をコントロール出来るなんて面白いな、でも極力美化しないで失敗した記憶とかもずっと残しておこう」
「えっ? どうしてですか?」
「だって失敗は成功の元じゃないか。君との性交が成功するまで失敗の記憶は残しておかないとね」
「あのね、あなたアンドロイドなのよ」
「あ…」