「ついにUSBの規格も9.0まで来たか…」
「はい、ファイルの大きさに関係無く光の速度での転送率が可能になりました」
「USBフラッシュメモリーの容量もインフィニティーにまで増大しているのか…」
「はい、理論上の圧縮を繰り返し、事実上無限と言える記憶領域になりました」
「完璧過ぎるな」
「はい、これ以上の完璧は有り得ないくらいに完璧な機器になりました」
「これならば人間の一生分の記憶が軽く入るな」
「勿論です。地球上全ての人間の一生分の記憶だって余裕でコピー出来ますよ」
「いいよ、世の中にはくだらん人生を送る人間も居るからな、安全が確認されているんなら私の優秀な記憶をコピーしてくれたまえ」
「はい、一瞬でコピー出来ますよ。この所内で一番記憶力が良いあなたに決めていました。忘れるという作業をしなくても精神に支障をきたさないあなたに」
「え? あれ、ありがとう。もう終わったのか。USBフラッシュ9.0の試作品10本全てにわたしの記憶をコピーしてくれたんだね」
「では、実験を開始しますね」
「え? 実験?」
「はい、あなたにそっくりな精巧なアンドロイドを10人作らさせていただいております」
「お、おおそうか、そうだよなコピーしたままわたしの記憶を眠らせて置くのは勿体無いからな」
「パラレルワールドの実験ですよ、10年後に再統合の実験をさせていただきます。その時精神に障害を来たす様ならば、記憶を選択淘汰させていただきます」
「ま、待てよ、記憶を消すという事は人を殺すのと同じ事だぞ、いくらコピーだって分かれた時から個別の人間だぞ、しかも全てわたしだ」
「大丈夫です。パラレルワールドの実験のサンプルとして消さずに残します。でも、いつ起動させるかはわかりませんけどね」
「10人の自分の、別々に歩んだ10年の人生の記憶を、10年後に自分の心が全て受け入れられるように努力しないとな…」