「えらい先生のために秘書や族議員は、自分の生活や政治生命を犠牲にしてでもえらい先生を助ける」
「あたりまえだ」
「グンタイアリが水溜りを渡らなければならない時、何千匹もの働きアリが手と手を握り合って、溺死してでも手を離さず橋になって仕事を全うする」
「あたりまえだ」
「お腹の中で胎児の手の指を作る時、指と指の間の細胞が自殺、アポトーシスして手を完成させる」
「あたりまえだ」
「自己犠牲がなければ人体も社会もなりたたない」
「あたりまえだ」
「そこでだ…」
「あたりまえだ」
「…」
「あたりまえだ。だから我々えらい宇宙人のためにきみら地球人は犠牲にならなければならない」
「え〜と、わたしたち地球人よりあなたがたのほうがえらいのですね、えらい宇宙人なのですね?」
「あたりまえだ」
「… 。そうですね、あたりまえならしかたありませんよね。地球の生物だけじゃなく、自己犠牲というものは宇宙の法則なのですね」
「あたりまえだ」
「え〜と、わたしたち地球人、地球の生物は、あなたがたえらい宇宙人の生活をほんのちょっと快適にするために、地球を爆破して宇宙の塵にしなければならないのですね? あなたがたえらい宇宙人の住む星の軌道にほんのちょっと良い影響を与えるためだけに自己爆発させなければならないのですね?」
「あたりまえだ」