「夢の薬が出来ましたね」
「ええ、この『カルス薬湯』に浸かるだけでそれは成されます」
「『カルス薬湯』…、一瞬にして人間を溶かして細胞単位にまでバラバラにしてしまう薬湯。しかもそのバラバラになった一つ一つが全て一人一人の人間に甦生する万能幹細胞カルスになる」
「忍者の分身の術みたいですね」
「そうね、全部同じ遺伝子クローンで人間の場合平均して60兆個の細胞だから60兆人になる分身の術になるわ」
「凄まじいわね、でもそんなに同じ人間ばかり必要無いわ、上質の肉が採れる家畜でも無い限りね」
「そこでこの機能強化したRNAよ。これを『カルス薬湯』に溶けたカルス細胞にふりかけて混ぜ合わせてあげるだけで良いのよ」
「機能強化したRNA?」
「ええ、RNAにはDNAそのものを変える凄い能力があるのよ、ウイルスなんてDNAが無くてRNAだけで生きて居るのよ」
「そうですね、RNAだけのウイルスが動物や植物に感染して、進化をさせるきっかけになっているという事実があるわけですものね、DNAの崩壊、種の絶滅と紙一重だけれども…」
「機能強化したRNAを混ぜた『カルス薬湯』からはちょっとした環境の差で様々に体を変えた人間が出来るのよ、海に放てば人魚になるし、草原に放てばケンタウロスになるわよ。空に放てば天使や悪魔みたいなのにもなって空を飛べるようにもなるのよ」
「種が一代で60兆に増えるのね、同じ種が居ないからその一代で終わりじゃない」
「あたりまえよ、60兆通りの人生を楽しむためだけに作った技術なんですもの」
「そうだったの…、一度きりの人生ですものね、あたし、『カルス薬湯』に浸かってみるわ。溶けたらそのRNAをお願い」
「まいど〜」