「無重力が動物と植物でこんなに明暗の差を出すなんてね」
「そうね、わたしたち人間にとっては無重力は著しく体力を低下させるものなのに植物ときたら…」
「光を当てた方向に力強く大きく伸び伸びと成長するなんてね、しかもこんなに青々と… 地球の何倍も大きくなるわ」
「この宇宙船での食料問題は解決だわね」
「そうだけど、この植物パワー、わたしたち人間に取り入れられないものかしら」
「動物と植物の一番大きな違いは細胞壁が有るか無いかよ。その細胞壁を人間の細胞にも取り入れる技術はあるわよ」
「でも、そんな事したら動けなくなっちゃうじゃない。丈夫になるのは良いけれど」
「じゃあ、ユーグレナの技術を取り入れましょう」
「ユーグレナ?」
「ミドリムシの事よ。動物でありながら植物の様に光合成も行なっちゃうのよ。無重力の環境では物凄く生き生きと行動出来るわ。それに自分自身で光合成するわけだから食料も要らないわ」
「あら、簡単に活発に動ける植物人間に成れちゃったわね、わたし。まあ、光に当たるだけでぐんぐん大きくなってゆくわ。凄い凄いエネルギー漲るって感じだわ」
「あの… お願いがあるの」
「やだ、宇宙船の航行燃料が底を着きそうじゃない!」
「そうなのよ、航路計算をミスったわ。あなた燃料になってくれるわよね」
「え!」
「ユーグレナは良質の油も大量に精製してくれるのよ、普通の植物の何倍もね」
「…」