「試験管内で卵と精子を受精させ、培養液の中でその受精卵を成長させて、胚にしてから子宮に戻してやってもちゃんと着床して、正常な胎児として妊娠を続けて、赤ちゃんとして出産までさせる事が出来る」
「当たり前でしょ」
「そう、当たり前だわ。そして古来からその『胚』を子宮以外の所に植え込む臨床実験もして来た」
「肝臓や腎臓そして不特定の腹腔で成功しているわよね、そういう所で奇形腫になって、そのこぶの中には神経や血管や骨そして体毛までごちゃごちゃに混ざって生育している」
「そうよ、そのこぶが宝である事に気付いたのよ」
「どういう事? そのこぶは一種の癌なわけなのよ」
「自由に伸びている神経や血管や骨を簡単に組替えて、何万年もかかる進化をたった一代で完成させられる事に気付いたのよ。突然変異による進化も比較にならないわ」
「なるほど、今の蘇生技術なら可能だわね、遺伝子もいじらなくて済む」
「ずいぶんへんてこりんな生物をこぶから作ったものね」
「面白いでしょ。こぶからはあまり毛を採集できなかったから殆どを頭に集中させたわ」
「あら、二本足で立つなんて… やだ、裸で二本足で歩くサルだなんてなんて変な奴なの? 頭も妙に大きいし化け物ね。この地球という星の癌にならなければ良いけどね」
「その時はその時よ、不具合が生じて来たらまたばらしてこぶに戻してやりましょう」