「引き出しとかポケットはたくさんあればあるほど良い。どんな状況にも対応出来るからね」
「ええ、再生医療の発達で地球に生命が芽吹いた頃から現在までの生物の全遺伝子を書庫にしまう事が出来るようになりましたからね」
「そう、その壮大な書庫を有効活用しましょう。人間なんて自分の持っている総遺伝子のほんの数パーセントしか使ってなくて後は生きて居るうちに発動しないんですもの、その無駄な部分にこの壮大な書庫を押し込めましょう」
「そうすればどんな星、地底、空気、水、氷の中でもそれに対応した遺伝子を発動させて生きていく事が出来るわ」
「でも、膨大すぎるわね、このポケット」
「そ、そうね、ポケットがありすぎて検索だけでも大変だわ」
「いっそのこと全部の遺伝子を発動させておいて、その環境に適した細胞部分が生き残ればそれを中心にすれば良いんじゃない?」
「それよそれ、それでいきましょう」
「ばけもの」
「そうね、いくらなんでも全てのポケットを発動させるのは無謀だったかもね…」
「あ、逃げた!」
「居ないわね、この研究所内に居る筈だけど…」
「人間に… いえ、ゴキブリとかに化けているのかも知れないわ、なんにでもなれるんですもの… ポケットをうまく使い分けているのかもしれないわ」