「たったこれだけの精子を採るのに、肉としては商品価値が無くなる歳まで採り続け、この巨体を維持していかなければならないのか?」
「ここの種牛の精子は高く売れます。最良の乳牛を孕ませる事が出来るからです。ここには数百頭居ますが、この広大な施設も維持できる程の価格で売れます。だから問題ないですよ」
「しかしシリンダーにたったこれだけの量を採るのにこの巨体とは… 今の科学技術でなんとかならないのかね?」
「たしかに精子は高蛋白とはいえ、この巨体を維持する食料の量は過剰で無駄と言えば無駄ですが…、かといって遺伝子操作された万能体細胞から造られた精子は消費者が嫌っております。別に問題は無いのですが」
「そうだな、パッケージに嘘は書けないからな… お、そこに居るネズミ、良いじゃないか、ちっちゃくて、そいつに牛のちんちんを移植しろ」
「…、ええ、今の免疫をだますテクニックを駆使すれば可能ですが…」
「これなら精子を冷凍保存する必要も無くなり、面倒な人工授精のプロセスも踏まなくて良くなるじゃないか、直接メス牛のところに交尾に持って行ける。それに今まで巨大なオス牛が小さなメス牛と交尾する時にメス牛を瀕死の状態にするという理由でコストのかかる人工授精を採用していたという理由もリスクも無くなる」
「確かにそうですね、巨大なちんちんを得るネズミはかわいそう? ですが、やりましょう」
「お、おい。いっぱい作ったな。しかも放し飼いとは」
「あ、オーナー。申し訳ない。ちんちんたちが逃げ出しちゃって」
「まさか」
「ええ、一匹一匹移植手術は面倒なので…、でも間接的遺伝子操作だからパッケージには表記しなくても大丈夫な筈ですよ」
「いや、それも表記する事になっている」
「あっちゃ〜 こいつら鼠算式に増えていきますよ、ネズミも牛も孕ませられるようにしたんで…」
「こいつら超ちんなのにすばしっこいな」
「はい、手に追えません」
「街中に? こいつらが?」
「はい」
「…」