ss0972 草食系と肉食系
「最近の男は草食系ってよく言われるわね、しっかりしなさいよ」
「草食は体にいいんだよ」
「…、そうだけど、そういう意味じゃないわよ」
「君は肉食系? バイオレンスな感じがするよ」
「だらしない男ね、食べちゃうわよ」
「君みたいな可愛い野獣になら食べられても良いな。でも、君の体のためを思って僕が植物人間になってから食べてよ」
「植物人間って… あなた、なにを言っているの?」
「宇宙で人間が普通に暮らせる様に、光合成が出来る技術が確立したんだよ。光と水と二酸化炭素とちょっとの窒素で長期間食料無しで宇宙で生きていける様になったんだよ」
「まあすごい。これからの宇宙時代、人間は草食系、いえ、植物系の植物人間が主流になるのね」

「いいよ、食べても。約束でしょ」
「…、あなた、植物人間になったのね」
「まあ動物と植物の良いとこどりの、単細胞生物のミドリムシの多細胞タイプってとこかな?」
「ほんとに良いのね、バランスがとれててなんか美味しそうじゃない」
「生でどうぞ」
『ガブリ』
「美味しい!」
「うぐっ」
「半分植物とはいえ、やっぱ痛いでしょ」
「うん。でも慣れないとね」
「え?」
「植物人間は食べられても再生するし、宇宙船内で大きくなり易いんだよ」
「つまり、あたしはこのままで良いという事なのね」
「うん。君は必要な存在だ」