「これは…」
「パーマをかけるんじゃないよ」
「知ってるわよ。ヘッドギアってやつでしょ? 電極の網ね、微妙な電気や血流まで計測出来て、最近は人の繊細な心までわかるようになって来たとか」
「そうだよ、車椅子の人が意思の力だけで自由自在に車椅子を動かせたり、盲目の人がカメラレンズを通して物を見れるようにもなって来た」
「でも、そこまで高度に出来る様にするには脳表面を計測するヘッドギアではだめでしょ? 電極の針を脳の奥の方まで刺し込む必要があるのよね」
「そうだよ、良く知っているじゃないか。電極の針だったら計測するだけじゃなく、逆にコントロールする電気も外部から流せるからね」
「もう出来ているんでしょ?」
「うん、ほら」
「これは… どう見ても普通の帽子じゃない! 随分コンパクトになったのね、あら、オシャレなのも在る。かぶってみても良い?」
「良いよ、量産完成品だから危険は無いよ」
「なんか…」
「ちょっとなんかあったって感じだけでしょ? つくつくされたってくらいだよね、帽子をかぶった瞬間に君の脳には無数のミクロン針が刺し込まれんだよ」
「… いや」
「もう君の体は僕の意思どおりこのリモコンで動くんだ」
「やめてよ」
「言語中枢もいじってみるか」
「愛してるわ」
「僕もだよ」
その男も、奥でにやにや笑っている教授の作った『つくつく帽子』をかぶって居た。