ss0914 景色
 乗り物から映る景色は、其処に本当に在るのだろうか?
「触れて、感じられるっていう事は、きみはそこに居るという事なんだよね」
「あたりまえじゃない。なにを言っているの」
「ふと、想う事があるんだよ。朝目覚めて自分と廻りを認識して…、という事を毎日繰り返していると…、それでさ、たまにちょっといたずらしさ、虫とかに意識を変えて考えてみたりすると、そこに本当に自分が居て目に映る景色が本当にそこに在るのかなってさ」
「まあね、寝るという行為で意識に毎日区切りが生じて、そして毎日全てを再認識しなければならない訳だからね」
「意識に途切れが無い様にする事は出来ないのかな?」
「乗り物である私たちの体は、そして脳はその様には作られていないわ」
「その様には作られていないか…」

『この実験意識チップ、薄っぺらなチップのくせに我々に気付きだしたのかな? こいつが寝ている間に我々がメンテしたりこいつの彼女や世界を作ったりしているのを…』
『わたしたち眠る事なく、本当に存在して、普通に永遠に生きて居る生きものに対する冒涜だわ』
『こいつの生活からのデータは捕れた。そろそろ生涯を閉じさせてやってもいいぞ』