ss0908 カップのカップル
 その喫茶店に私は一人でよくゆく。
 そこは静かな喫茶店だからだ。
 そこに来る客はみんな静かだ。
 カップルが多い。静かなカップルたち…
 じっと見詰め合う。手を繋いだまま固まってる。
 目の前に相手が居るのに、メールでのやり取り。
 みんな静かでいることが好きらしい。
 静かにキスをする。
 静かに、静かに始める…《えっ!》
 他のカップルはそれに気付いているようだか…
 別段物凄く綺麗で可愛い女ではなかったのだが、
 私はたまらなくなり、男を押しのけて、やってしまった。
 男は静かに見ていた。

『人間という生物のコロニー、町というものを実験ケースに入れて観察している訳だが、一匹を除いてあんまり繁殖しようとしないようだな』
『薄々感じ取って居るんでしょ? そこが虫篭だって事を』
『とにかくこの一匹は省いて潰しちゃいましょう』
『そうだな、遺伝子には個性を持たせないといけないからな』