ss0907 プライバシー
「昔は駅にコインロッカーが設置されてて、毎日赤ちゃんで満杯だったもんだ」
「また自慢話? いいかげんにしてよパパ、パパもそのコインロッカーベビィーの一人だったんでしょ?」
「そうさ、凄いだろう。そんなパパが今の個室システム社会を造り上げたんだ」
「うん、凄いよ、パパの作ったロッカーはコンパクトなのになんでも揃ってる。食事はもちろんシャワーやトイレも個室マッサージも出来て、しかも無駄の無い永久機関のシステムを完成している」
「そうさ、しかも磁力を応用した機動性があるから、ロッカーに入ったまま学校だって遊園地だって、どこへでも高速で行ける」
「うん、学校の教室の寸法もぴったりロッカーが40個隙間なく収納出来るように設計されているし、遊園地のジェットコースターだってロッカーを繋げるだけでそのままジェットコースターになっちゃう」
「あたりまえだけど、プライバシーは完璧だろう?」
「うん、完璧すぎて未だにクラスメイトの顔も先生の顔もわからないよ」
「…」
「もちろんパパの顔も」
「…」
「もしかしてぼく以外の生物はもう地球上には居なくて、コンピューターがぼくだけのために擬似生活を演出してくれているだけとか… ?」
「…」
「コンピューターにはぼくのプライバシーは丸見えって事じゃん」
「…」