ss0904 へその緒
「これは、切らないといけないものなのでしょうか?」
「いけないというわけではありませんが、切らないで居ると親も子も不便でしょう」
「そんな事はありません。この子とわたしは一心同体で今の厳しい時代を乗り越えてゆきたいんです」
「溺愛しているのですね、まあ良いでしょう、いつでもへその緒は切れますからね」

「…、一年もの間へその緒を切らずに居たのですね、それでまた妊娠し出産」
「はい、今度もへその緒を切らないようにお願いします」


「…、二十年もの間へその緒を切らずに居たのですね、それでまた今度は二人の娘さんが妊娠し出産」
「はい、母と同じく今度もへその緒を切らないようにお願いします」
「わたしも母と姉同様へその緒を切らないようにお願いします」

 そして地球は空前の食糧危機に見舞われた。

「こういう時の為にわたしたちはへその緒を切らずに居たのよね」
「そうよ、へその緒を通して誰に栄養を集中するか協議しましょう」

 こうして一人を残してみんなミイラの様に干からびて… へその緒は 切られた。