「現代の大衆向けの芸術家である漫画家や歌手は、死ぬとその瞬間から一気に神扱いになる…」
「そうね、昔の大衆向けの芸術家はゴッホのように長い年月と物凄い家族の努力が必要だったけど、ほんとに現代は亡くなった瞬間から後世に残る大芸術家に変身してしまうわ。もちろんそれなりに生前に活躍していないといけないけれど」
「そう、それなりに活躍しているだけで、注目されたのは若い時だけで、死ぬ直前までは世間に忘れ去られていた人でも死んだだけで一気に神扱い…。良いんだけど、なんだかな」
「人生の後半は売れなくて、生活にも困っていたかも知れないのに、亡くなってから生前以上に売れるって…」
「動物がよくやるけど、うちの事務所の歌手達にもやらしてみるか『死んだふり』」
「…。それをするだけで、そのアーティストの真価がわかって、うちの事務所も立ち直れるという事ね」
「そういう事だ」
「でも『死んだふり』が発覚したら逆に物凄い非難を浴びて一気に地に落ちるわ」
「そうだな、完全犯罪を目指さないとな」
「きゃっ! なにをするのあたしを…」
「心配するな、冷凍保存するだけだ。きみは今はスタッフだが、昔はアイドル歌手だっただろ、頼むよ再評価の大ブレイクが一段落してから解凍すれば大丈夫だから」
「やめて!」
「神扱いにならなかったな…。冷凍保存代、解凍代もばかにならない。悪く思うなよ」
「げっ、スイッチを切った瞬間に大ブレイク!?」