ss0874 喰
「しかし当たり前の様に殺して喰うよな」
「特に人間は『他人』が調理したものを喰う事が出来るから、余計自分以外の生きものを殺しているという意識が薄いわ」
「喰われるほうの気持ちも考えないとな」
「え?」
「そ、そうだな、ナンセンスな発言だった。ごめん」
「誰も好き好んで喰われようとは思わないわ。そろそろなんとかしましょうよ」
「って、どうすんの? まだまだロボット工学は人体に代われる処までには来ていないよ」
「今流行の体細胞からのクローン技術を利用するのよ」
「自分自身を培養して、自分自身を喰うという発想だな」
「そうよ、自分自身を喰うなら人食い族がかかる病気にもならないし完璧な筈よ」
「で、そのクローン人間を育てるのに、何を喰わすつもりなの?」
「普通に食事させるわ」
「…」
「あたしは、あたし自身が直接他の生きものを殺していないという満足感が欲しいだけなんですもの」
「…」
「なによ」
「その、クローン人間たちは素直に喰われてくれるかな?」
「当たり前じゃない。あたしがオリジナルなんだから。教育も喰われるための思想を叩き込んでやるわ」
「…」