「天国って、退屈な処ね」
「だろ、もともと無かった地獄だってみんなマゾになって慣れてしまって退屈している」
「物質界は良いわよね、退屈しなくて」
「ほんとだよ、本当の楽園は物質界だよ、色々悩めて、自分の意志で決定して生きてゆける。こんなに楽しい処はないよ」
「最初は天国しか無かったのよね。精神世界。エネルギーだけの世界だわ」
「そう、みんな生まれた時から悟っているから、殆どなんの変化も無くて面白くもなんともない処だよ」
「そう、その無限の退屈な時間から抜け出すためにエネルギーを等価交換して物質を生成して物質界を造ったのよね」
「そうして出来た物質界では、必然的に究極の選択を問われるルールが誕生した」
「そうね、物質である自分の体を維持して生きるために、自分以外の生きものを殺して食べるという事ね」
「そう、この究極の恐ろしいルールのために様々な選択、迷い、争いが生まれた」
「そうね、全ての生きものは戦いに明け暮れる生涯になったわ」
「その殺しかたによって、地獄という死んでからの反省場所も造られた」
「しばらくして、性が現れて、愛というものも生まれたわ」
「自分以外のものを愛す。配偶者、子、一族、そして生きもの全体を愛すという概念が生まれた」
「でも、ナンセンスね。物質界には究極の『食』というルールがつきまとう。他者を殺さなければ生きてゆけない」
「愛というアイテム。奥が深いよね」
「もともと天国にも無かったものなのにね」
「最初の天国は自他の区別が無い処だったからね」
「『食』から色々なものが生まれたわ。地獄も、天国での階層も、愛、個という概念までも…」
「食ショック!」
「…」