「タンパク質は塩基の乗り物だと思っていたが…」
「なにやってんだろうね、ウイルスは」
「タンパク質の塊である人間や動物を滅ぼしてしまっては、その中に居る塩基のRNAやDNAは存在できない。そして同じようにタンパク質を宿主にしなければ、剥き出しのRNAやDNAしか持たないウイルスは増える事も存在する事も出来ない。それなのになにを考えてるんだか…」
「RNAやDNAは情報の塊なだけで考えたりはしないだろうけど、地球の危機は察知しているんだろうな、このまま人間が地球上に居たんでは地球上の全RNA、DNAはおしまいだ。ウイルスたちは自らの身を犠牲にして仲間のRNAやDNAを守ろうとしているのかも知れない」
「そうだな、きっとそうだ」
「しかしほんとうにRNA、DNAは情報だけという感じで生物味が無いな、これはやはり誰かが作ったものではないのか? 四つの塩基。その組み換かえ、組み合わせだけ。まるでコンピューターの情報処理そのものだ」
「生物は、人間は、俺達は無機質な機械に支配されているという事か」
「俺達の思う事、考える事。情動とか、感動とかときめきって…」
「… 意識・心・魂。それはRNA、DNAを維持するための架空のなんの意味も無い道具のようなものだったのか…」