ss0845 煮え切らない奴
「食べ物を料理して食べるっていうのは、人間だけだよな」
「そうだな、他の動物はそのまま生で食べる」
「日本人も生の食べ物が好きだけどな」
「寿司ね、健康食として今注目されている」
「人類が長い間料理の手法として用いて来たのは、焼くという調理法だ、これが何万年も続いている」
「そうだな、鍋を使って煮炊きして料理するっていう調理法が考え出されたのはつい最近の事だ」
「自然界でも山火事とかで動植物が焼け死んだのを他の動物が食べるという事は有って、焼いたものは他の動物も食べて来た経験があるが、煮炊きしたものは近代の人間が与えなければ食べる事は無い」
「そうだな、鍋を使って煮炊きする調理法は物凄く特殊であるという事だな、今では煮炊きする調理法のほうが多いのにな」
《どうだい? 協議は決まったかい?》
「まだです」
《我々はきみたち地球人を食す事に決めた訳だが…》
「はい、わかっております。でも、どうせならおいしくめしあがっていただきたいと思いまして」
《他の星を攻めに行って来るが、それまでに考えておけ、とりあえず、弁当を頼む》
「はい、若いぴちぴちの女の子の真空パックと噛めば噛むほど味が出る筋肉質のニグロイドの燻製をご用意いたします。長く持ちますよ」
《いや、すぐ帰って来れると思う。煮物を用意しておけ、期待しているよ》
「熱いうちがおいしいので、戻って来る一時間位前に連絡をください。それまでに人選をしておきます」
《煮込むからといって古いものは入れるなよ》