ss0826 労働2
「みんな自分のために生きているのね」
「あたりまえじゃないか、きみとは結婚という契約はしているが、財産までは共有していない」
「あたしたちの子供にお金も残せないなんて」
「あたりまえじゃないか、子供はみんな借金を抱えて産まれてくる。出産費用、教育費用は全て手の平のチップに借金として記憶される。そして労働できるようになってから返してゆく事になっている」
「人は一人で生き、一人で死んで行くのね」
「あたりまえじゃないか、それはこの『個』のシステムが出来る前から普遍的に続いている。どんなシステムの時代でも変わらない」
「それはそうだけど、こんなにはっきり…」
「不満なのかい?」
「いいえ、自分でかせいだお金を死ぬまでにどうやって処理しようか悩んでいるのよ」
「いいな、お金持ちは、そういう発想は俺のような低所得者には無いよ、老後が心配だ」
「うふふ、労働できなくなって介護や医療費が払えなくなった時点であなたの人生は終わりですものね」
「いいよな、女は、家事の労働にもお金が払われるようになっていて、きめ細かい家事は重労働とみなされて大金が支払われる」
「家事にだけではないわ、今晩どう?」
「いや… したいけど、きみのような美人を抱くにはそうとうの対価を支払わなければいけないからな」
「というか、あなた、ドメスティックバイオレンスがしたいタイプよね?」
「…、そんな事したら一生かかっても返せない借金を背負う事になる」
「うふふ、良い時代になったものだわ」