ss0793 が~ん!
「癌です」
「ええっ!」
「おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「あなたはこれから新天地にゆくことになります」
「はい、そこで…」
「そうです。あなたはそこで始祖となられるのです」
「うれしいです。ぼくがその新天地で神様になれるなんて!」
「条件は整っています。すぐに出発してください」
「はい、癌で死なない前に行かないといけませんものね」
「ええ、癌はすでにあなたの体中にきれいに転移しているのですから」


「着いたぞ。なんにもない、良い星だ。
 よかった、ちゃんと培養スープである海というものを用意してくれている。
 この海というものにぼくは浸かるだけでいいんだ。
 ぼくはこの星の始祖、神様になれるんだ…」

 癌細胞は、体の細胞のように機能分化されたものではなく、条件さえ整えてやれば、初期胚や万能細胞に変わり得るものなのである。
 その星は、超悪性癌細胞から生命が発生した、地球という争いの絶えない星となって、今も宇宙にあります。残念ながら…