「これがばらばらにしたマウスの心臓のけんだく液だ、そしてこれがニワトリの心臓のけんだく液だ」
「混ぜ合わせ実験をするのね、混ぜ合わせ実験って意外と複雑なのよね」
「そうなんだよ、この組み合わせの場合、実験としては一般的というか、正常にマウスの心臓細胞はマウスの心臓細胞どうしで集まって心臓を再構築し、ニワトリの心臓細胞はニワトリの心臓細胞どうしで集まって心臓を再構築する」
「仲間の細胞の選別と接着を正常におこなうのよね」
「しかし、ばらばらにしたマウスの軟骨細胞のけんだく液と、ニワトリの軟骨細胞のけんだく液を混ぜ合わせると仲良く集合しちゃうんだよな」
「マウスの軟骨細胞とニワトリの軟骨細胞とマウスの心臓細胞を混ぜ合わせた実験やってみた？」
「なんだ、知ってたのか、そうなんだよ、種の同じ仲間どうしひっつくんじゃなくて、マウスの軟骨細胞はニワトリの軟骨細胞とひっついてキメラ軟骨を作っちゃうんだよな、同じ形質どうしとはいえ種の違う方を選んじゃうんだよな」

「地球の周りになんか細胞のようなものがいっぱい集まってきているって、ニュースでやってたわよね」
「そうだね…」
「一つのおっきい宇宙人になるのかしら、それともあたしたちと合体してキメラになって共に生きてゆくのかしら」
「そうだね…、どっちにしてもゆゆしき事態だよ…、地球人の種としての危機だ」
「種の機嫌しだいね」
「…」