「鵺?」
「頭がサルで、胴体はタヌキ、尻尾はヘビだ」
「キメラ?」
「頭がライオンで、胴体はヒツジ、尻尾はヘビだ」
「おまえ悪趣味だな、伝説の怪物をわざわざ選んで作っちまうとはな」
「ふふふ」
「やはり胸腺を無くしたそれぞれの動物を作ってから縫い合わせたのか? 免疫能力、他者、自分を無くして、拒絶させないようにして」
「そうだ、厳密には胚の段階で融合させ、それぞれの遺伝子の特定の部分を書き直すという作業をした。どの部位を生かし、どの部分を殺すかを正確に計算した」
「そうだな、全ての生物のゲノムは解析されているからなんでもできる」
「たのしい時代になったものだよ、ここは宇宙だから、細菌やウイルスも容易に遮断できているから、胸腺の無いこの鵺やキメラは普通に生きてゆける」
「お、今度はなにを作ろうとしているんだ? この胚は?」
「ふふふ、定番のあれだよ、古典的なキメラ作成手法でやっているんだ、十月十日後に見せてやるよ」
「おまえ…」
「子供向けの映画スターだ、懐かしいだろ」
「ゼブラーマンに、タイガーウーマン…」
「おまえ悪趣味だな、人間でやっちまったのか」
「地球の法律、倫理は宇宙では利かないからな」
「…、古典的方法とか言ってたな、二つの胚の透明層を除去し単に合一させて作ったんだな、親が四人居る」
「そうだ、ゼブラーマンは白人と黒人、タイガーウーマンは黄色人種と黒人の胚を合一させた」
「綺麗な縞模様だな、映画で見たのとどんぴしゃりだ、縞の配置は微妙に細胞誘導酵素を操作したんだな」
「そうだ、これからいっぱい映画スターを作るぞ〜」
「がんばれよ、次は新しいデザインのヒーローを作れよ、子供達にリアルな夢を与えてあげるんだ」
「おう!」